養子縁組Story#04
N山さんご夫妻(42歳×44歳)
「娘のおかげで、素敵な出会いをいただきました」
N山さんご夫妻は2018年の夏、当時8か月だったA子ちゃんを養子に迎えました。同じ特別養子縁組を経験したたくさんのご家族とSNSを通じてつながるなど、充実した日々を送るN山さんご夫妻。「娘のおかげで、子育ての喜びと、素敵な出会いをいただきました」と、語ります。
(聞き手・文・写真=清水麻子)
N山さんご夫妻 <2017年、東京都の養子縁組里親登録>
夫 IT関係の会社員。趣味はサッカー、フットサル、テニス、バトミントン。
妻 主婦。趣味は旅行。コロナが落ち着き、家族で飛行機に乗ることが夢。
※年齢は2021年9月現在
「抱っこしてみますか?」
━━登録のきっかけから、教えていただけますか?
妻 私は卵巣がうまく働かない病気で、2度の流産を経験しています。いろんな病院で5~6年治療をし、手術も経験しました。最後には治療に専念しようと仕事もやめましたが、妊娠は難しく、そんなときに主人が、「養子縁組を考えてもいいんじゃないか」と言ってくれました。
私は諦めきれなかったのですが、年齢のこともあって、2人で児童相談所に話を聞きに行ってみました。治療と並行しながら養子縁組里親に登録できることを知り、やってみることにしました。
━━ご主人は、特別養子縁組を知っていたのですか?
夫 僕は海外生活が長くて、身近に養子の友人もいました。だから知っていましたし、違和感もありませんでした。
━━登録後、どのくらいでA子ちゃんのお話があったのでしょう?
妻 半年くらいが経った頃、児童相談所からお電話をいただきました。初めて会ったのは乳児院の交流部屋で、職員さんが、まだ小さかった娘を連れてきて、「抱っこしてみますか?」と言ってくれました。そして娘に、「パパとママになる人だよ」と紹介してくれました。うれしかったですね。
夫 畳の上で、ちょっと遊びました。
妻 その後、本格的な交流がはじまりました。人見知りはそんなにしない子でしたが、最初のうちは眉間にしわを寄せていました。でも交流を重ねていくうちに、だんだん笑顔をみせてくれるようになりました。彼女なりの緊張が、表情に出ていたのかなと思います。
3歳に成長したA子ちゃん。公園が大好きです。
SNSを通じて広がった縁組のお友達の環
━━活発で愛らしいお子さんに育っていますね。
妻 はい、元気いっぱいです。体を動かすことが大好きで、公園に連れて行くと、お昼もおやつも食べないで、端から端までずっと走り回っています。私のほうが「おなかすいちゃったよ~」と、エネルギー切れになるくらいです。
夫 あと、ずっとジャンプしている(笑)。
妻 家の中で、面白い踊りもしていますね。夏には水遊び、週末には家族で遊びに出かけ、家ではお店やさんごっこや、お医者さんごっこ。いろんな表情をみせてくれるので、すごく楽しいです。
悩みはつきないですが、娘を迎えていなければ、こういうことを考えることもなかったのかぁと思いますし、いろいろ勉強をさせてもらっています。
夫 ほんとうに、そう思う。
妻 エネルギーがある子なので、なるべく長い時間外で遊ばせたいと思い、忙しない朝のスケジュールをどうやったら効率的に済ませ、いかに早く外出できるか、いろんなお友達に相談したりしています。
━━お友達は、どんなところで見つけるのでしょう?
妻 娘を迎えてすぐの頃から、近所の児童館に通っていて、養子であることを打ち明けられるお友達ができました。あとSNSを通して知り合った縁組経験者のお友達が全国にいて、家族ぐるみで仲良くさせていただいています。
━━新しい、つながり方ですね。
妻 はい。インターネットでいろいろ調べていたときに、SNSで「#養子縁組」とつけて発信している方が何人もいらっしゃいました。「もしかしてご近所さんかな?」「気が合うんじゃないかな?」と思った方々に連絡してみました。やりとりをしているうちに、「今度会いましょう!」となっていきました。
民間を通して縁組をした方もいれば、児相を介しての方もいます。みんな同じ経験をしているので気持ちが分かりますし、日常の悩みも話し合っています。
家族も、ひとつの出会い。
生まれたことを肯定し、前を向いて生きていける人に
━━真実告知は、されていらっしゃるのですか?
妻 はい、ちょっとずつしています。何となく分かってきているのでは?と感じることはあります。
夫 僕は、絵本を手作りしました(トップ写真を参照)。時々、読んであげたりしていますが、あんまり関心がないようにも見えます。
妻 まだ3歳なので、「産む」という概念を理解するのは難しいのかもしれないです。乳児院のMさんが、ときどき訪問に来てくれていたので、家でMさんのことをよく話しているのですが、「Mさんから、養子のお友達はみんな生まれたの?」と聞いてきます。
生まれたことを肯定し、前を向いて生きていける人になれることを願っています。生みの親のお名前も、ことあるごとに伝えています。ただ現状は情報があまりないので、そこをもっと知りたいなと思っていました。
━━何かのメッセージが分かるものとか?
妻 はい。娘は小さく生まれて、当初は新生児集中治療室(NICU)で過ごしていたことは児童相談所から聞いていました。でもその程度で、女性が娘を産んだときの気持ちまでは分かりませんでした。娘にどんな思いを抱いているのかを、ずっと知りたいと思っていました。
もちろん、知らないほうがいいこともあると思います。でも、今はマイナスもプラスも含めて情報がゼロなんです。だから、ほんの少しでも手がかりがほしいと思っていました。
手がかりさえあれば、娘の人生の道標につながるかもしれない。だから児童相談所の担当の方と連絡をとり続けていました。そうしたら先日、娘には血のつながっているお姉ちゃんがいたことが分かって、娘と会わせることができたんです。
━━それは、すごいですね。
妻 はい。そして女性が、いつか2人の娘に会うことに期待を寄せていることも知ることができました。娘への愛情を確認することができて、本当よかったと思いました。
お姉ちゃんを育てている養親さんとは、ラインで連絡をとっています。娘たちが大きくなっても、ゆるやかにつながっていられる関係でいられたら、うれしいですね。
━━家族の夢はありますか?
妻 旅行に、いっぱいいきたいと思っています。コロナが終わったら、すぐフィリピンに行きたいですね。
夫 僕の母の出身地がフィリピンなので、親戚がたくさん住んでいます。家族のつながりが強い国なので、遊びに行ったら大勢の親戚が迎えてくれて、楽しいと思います。
妻 みんな子どもが大好きで、昨年のクリスマスには親戚みんながZoomでつながって、すごく楽しかったです。
夫 実は僕も全員の名前が分からないくらい、大勢います(笑)
妻 娘は1人っ子ですし、甘えん坊のところがあるので、多くの方にかわいがってもらえるといいなぁと思います。最近、英語に関心を持ってきているところもあるので、ぜひ実現させたいですね。
N山さんご夫妻と、A子ちゃん。
養子縁組里親さんに関心がある方へ
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