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里親Story #12 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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里親Story

里親Story #12

K介さん&I子さん

 

 

「法律婚によらず、血縁にこだわらず、実子と里子と暮らしています」

   

 

法律婚をせず、パートナーとして共同生活をしているK介さんとI子さんは、実子のY君(7歳)を育てながら、里子のS奈ちゃん(4歳)を迎え、血縁にこだわらない「自由な」家族の形を作っています。伝統的な家族観とは異なる暮らし方を探す中で、里親制度にたどりついたというお二人。日々、どのような思いで 子育てをしているのでしょうか。お話を伺いました。(聞き手=長谷川優子、中村智美=写真、清水麻子=文)

 

 

 掲載用いつもの生活①

 

 

profile

K介さん <2021年、東京都の養育家庭(里親)に登録>

団体職員。趣味は散歩とサイクリング。週に2回、往復70キロを走行している。

 I子さん 地域で高齢者・子育てのボランティアにかかわる。布や糸に触れるのが好き。

 

「郵便物は、3つの苗字のものが届くんです」

 

━━ もともと里親制度に、関心を持っていらっしゃったのでしょうか?

 

K 里子っていう具体的なビジョンは多分、最初はなかったんです。I子さんと付き合い始めたのが大学生の時で、そもそも2人の間の関係性を将来どういうふうに築いていったらいいかっていうことを、よく話し合っていました。婚姻制度に則った形でパートナーシップを形成するよりも、婚姻制度によらない形でやっていくこともできるよねっていうことを考えていく中で、血縁にこだわらない子育ての選択肢のひとつとして、里親を考えるようになりました。

 

I  婚姻制度に対しては、同性カップルに認められていないなど、いろいろ違和感を感じることがあったんです。私の実家がわりと、血縁とか、籍が入ってることに価値を置くほうで、すごく息苦しさを感じていて、それに抵抗したい思いもありました。大学ではフェミニズムと出会い、既存の家族じゃない、多様な暮らし方や「かぞく」の形がもっとあってもいいのではと考えるようになりました。

 

K 里子のS奈さんも自分の苗字があるので、3つの苗字と3つの世帯が混在して一緒に暮らしています。なので、郵便物は、3つそれぞれの苗字で届くんです。

 

I 最初の頃は、里親に関して何かしら情報を得ようと、近くの児童相談所に、ふらっと行ってみたりしていたんです。

 

K 乳児院にも行ったりしたよね。

 

I そうそう! 養育体験発表会に行って、いろいろ調べていたら乳児院が出てきたので、訪ねてみたんです。快く話を聞いて下さったんですよ。

 

K ちょうどその間にY(実子)が生まれたりして、いろいろ忙しかったよね。

 

玄関の方を指さし、帰りたい意思を示していたS奈ちゃん

 

━━ S奈ちゃんとの暮らしは、いかがですか?

 

K 出会いから2年半くらいになりますが、最初の1ヶ月くらいは、表情が硬い感じでした。怒ってるとかじゃないんですけど、緊張していたんだろうなぁという感じがありました。当時、1歳半くらいで。それまで乳児院で暮らしていたのですが、うちに遊びに来たときが、生まれて初めて電車に乗ったときだったみたいで。それはびっくりするよね、と思いました。

 

I 最初の頃は、あまり寝ようとしなくて、夜になると、玄関の方を指さしたりして、帰りたいっていう意思を示していた感じがありました。時々、部屋の隅で、ずっと固まっているときもあったりして。Y(実子)のときは、基本抱っこすれば何とかなったんです。でもS奈ちゃんの場合は、抱っこを全力で嫌がりました。今ではめちゃくちゃ、甘えて抱っこをせがんだり、よく笑うひょうきんな子なんですけど。

 

━━ じょじょに前向きな変化があったのでしょうか?

 

I そうですね、自分を出せるようになっていきました。私にも愛情表現を示すようになっていますし、反対に、「うん、もういい!」みたいに拗ねるときもあって、いろいろです。

 

K コミュニケーションが増え、すごく話しやすくなりました。言葉でちゃんと説明してくれるようになってきている気がします。この春から幼稚園に通い始めて友達ができたりして、世界が広がっていることもあると思います。

 

━━ 実子のY君は、S奈ちゃんが来ていかがでしたか?

 

K 葛藤はたくさんあったと思います。年齢が3歳離れているとはいえ、急に小さな子が来て、自分のおもちゃや本をシェアすることになって、それに対して気持ちの混乱が見られました。私たちも、最初はいろいろ棚を分けて、絵本にシールをはったりして整理することばっかりやってた気がします。

 

I 里親をやるときに一番気を遣うのが、やっぱり実子のことでした。S奈ちゃんを迎えて数か月くらいのとき、Yにちょっと体調の変化がありました。幼稚園に行きたがらなくなったりもしました。最初すごく頑張って、S奈ちゃんを受け入れようとしていたけれど、お互いの距離感もまだわからない中で、疲れが出たのだと思います。S奈ちゃんはいつになったら帰るの?とか、S奈ちゃんのこと嫌い!とか訴えたこともありました。

児童相談所の方や、里親支援専門員さん(里専員)などの専門家の方々が訪問してくださって、よく話を聞いてもらいました。里専員さんは毎月、訪問に来てくださっているんですが、「あんまり心配と言ったりしないで、見守りましょう」とか、「こういうケースもありました」みたいに励ましていただき、Yのことも含めて親身になって考えてくださりました。本当に助けられましたし、今も助けられています。

今ではYの変化を感じます。S奈ちゃんをおんぶしようとしてくれたり、先日はスーパーでのお菓子選びに時間がかかっていたS奈ちゃんを私が急かしていたら、Yが私を制して、「お母さん、一生懸命に選んでいるんだから、待っててあげようよ!」と。思いやりを持って接するYの姿勢に、私も学ぶことが多くあります。

 

━━ 幼稚園や、ご近所の方々には、関係性をオープンに?

 

K 基本、もうストレートに、「うちは里親やってて」って言いますね。「何それ?」って聞いてくれれば、いろんな説明ができるから、それでいいんじゃないかと思っています。もともとわたしたちの苗字が違ったり、世帯が別だったりっていうのが前提にあるので、そっちの方が気になる人がいるかもしれないです。そういう人たちが里親やってるんだね、ぐらいで生活しています。

 

I 地域で高齢者や子育てのボランティアに携わっているんですが、周囲のみなさんは、実子も里子も変わらず接してくれます。自分の親が里親をやってたという方もいます。地域に子どものことを知ってる人が増えれば増えるほど、安心できる気がしています。ただS奈ちゃんとは異なり、周囲にオープンにできないお子さんもいるとは思います。

 

━━ オープンにしていると、真実告知がしやすかったりしますか?

 

K そうですね。できるだけオープンに暮らすなかで、里子や実子も自然に自分のライフヒストリーに触れ、話し合ってくれるようになったらいいなと思います。

 

I子  私は真実っていうとちょっと「秘められたもの」という感じがあるんですよ。だから真実ではなく、事実告知と言うようにしています。S奈ちゃんには、生んでくれたお母さんがいることは事実。Y(実子)が、私から生まれたのも事実。私もK介さんも、違う母から生まれてきている。そんな4人が、たまたま出会って今、一緒に暮らしているという感覚です。

 

掲載用家族の時計②

           日々の積み重ねが、よい関係性を支えています。

 

 

実子も里子も一緒の感覚で育てないと、うまくいかない

 

━━ 18歳で自立していく将来のことを話し合ったりすることは、ありますか?

 

I この前、K介さんと、そのような話をしていたんです。私は一緒に過ごせなくなると寂しいなと思っていたんですが、K介さんに、「いや、Y(実子)もいずれは自立するんだ。YもS奈ちゃんも同じ。2人とも、18歳になったら自立するんだと考えておけばいいんじゃない?」と言われて、はっとしました。2人とも将来は自立していく、いつかは私たちの元から巣立っていく、それが当たり前のことなんだと、そのとき気づかされたんです。それで気持ちが楽になったし、逆に自立までの時間を大事にしたいな、と思えるようになりました。

 

K これは私が男性だからかもしれないんですが、私にとったら、実子も里子も生活する子どもっていう意味では、ほとんど一緒の感覚です。いわゆる家とか血縁っていうことを抜きに人との関係性を考えたいって思うし、作り上げていくっていうか、築き上げていくものなんだろうなと思いますね。実子だから自動的に得られるものではなくて。

 

━━ あくまでも、日常での関係づくりが大事であるということですね?

 

K どんな相手でも、よい関係のためにやらなきゃいけないことがあるはずなんです。実子だから言わなくてもわかるとか、言っていいとか、そんなこと本当はなくて。そういうのは大人、子ども関係なく一緒だし、パートナーシップでも本当はそうだし。

とはいえ一番気を遣う部分は、実子との関係でもあって。やっぱりY(実子)の協力抜きでは、里親としての活動がありえないのは間違いないです。だからこそ、実子も里子も、本当に一緒に育ちゆかないと、うまくいかないと思います。これからも、お互い成長していく中で関係も変わっていくだろうし、いろんなことが待ち受けてる、と思いますけどね。

 

I あとよく思うのは、S奈ちゃんにとっても、 自分のルーツをどうしてもたどることが、これから出てくると思うんです。そういうときには、あまり否定的ではなく、やはり事実として捉えたいですね。S奈ちゃんの生みのお母さんの決断のおかげで、私たちもS奈ちゃんにも会えたし、どこかの時点で、家庭復帰しますとなったときには、「次はバトンをお戻ししますね」という感じかな、と考えています。

 

K もし家庭復帰が総合的に見て、彼女(S奈ちゃん)のためになることであれば、それは強い支えが1本復活するってことだと思うし、喜ばしいこと。私たちも、ひとつの支えの1本であるのは変わりないのだし。

 

━━ ポジティブに、関係性を捉えていくのって、いいですね。

 

I 実子だけ育てていたら、わからなかったこととか、実子だからという理由でしてしまっていたことって、たくさんあると思うんです。これからもあるかもしれないですけど、だからこそS奈ちゃんのおかげで、子育てのバランスが保てているのかなと思ったりします。余裕がなくて、自分もちょっと溺れそうなんだけど、みんなで一緒に泳ぎ方を覚え合うみたいな、なんかそうやって子育てをしていく方が面白いかなぁって思ったりします。

 

K 誰かに相談しながら、いろんな人と一緒に子どもみずからが育っていく環境をかたちづくっていくことが、里親制度の中に基本設計されてるんですよね。かつての時代よりも、里親はやりやすくなっていると思います。実子を育てていても、定期的に里専員さんがきて、子育ての悩みを相談できるなんてことも普通はないですよね。里親は、みんなで子どもの育ちにかかわることができるので、面白いですよ。

 

 

お気に入りのお弁当ケース③

 

 人と人との関係性も、少しずつ繕いながら、続けていくものなのかもしれません。

 

 

里親に関心がある・なりたい方へ K介さん& I子さんからのメッセージ

実子も里子も一緒に育ち合う。気づきと学びもたくさん

K 楽しいですよ。面白いと思います。いろいろ知れるし、学びになります。どんな形であれ養育里親はできると思うので、無理しない形で、自分に合った形で、やってみる方が増えるといいと思います。

 

I 自分たちだけで何とかしようとさえ思わなかったら、何とかなります。里親研修なども本当にありがたくて、子どもの育ちや関わり、コミュニケーションの取り方など、いろんなヒントや気づきが得られます。実子も里子も一緒に育ち合うことの楽しさに、ぜひ出会ってみてほしいなぁと思います。

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