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里親Story #11 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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里親Story

里親Story #11

鈴木孝昌さん(57)、佐代美さん(52)ご夫妻
Takamasa, Suzuki & Sayomi, Suzuki

 

「親も未完成なのが普通。だから、いい子じゃなくていい」

子どもがいなかった鈴木孝昌さん(57)& 佐代美さん(52)ご夫妻は約6年前、当時小学校5年生だったA君(現在は高校1年生)を迎えました。当初は活発で礼儀正しかったA君ですが、日が経つに連れ、様々な心配事が……。そんなときに、周囲からいただいた励ましが、心の支えになったといいます。鈴木さんご夫妻に、お話を伺いました。(聞き手=木村有加里、清水麻子=文・写真)

 

 1

 

 

profile

鈴木さんご夫妻 <2014年、東京都の養育家庭(里親)に登録>
すずき・たかまさ 自営業。趣味は映画観賞、野球鑑賞(日ハムファン)、ゴルフ。就寝前にはミステリーや映画の原作を読む。
すずき・さよみ パート勤務。友人とのおしゃべりが息抜き。得意料理は肉じゃが。A君に喜ばれるので鶏の唐揚げをよく作る。
※年齢は2022年1月現在

 

交流中には登山やナイトクルーズにも出かけて


━━ 自然が豊かな地域で、素敵ですね! A君は、どのようなお子さんなのでしょうか?

 

佐代美さん ありがとうございます。A君は、野球とサッカー好きの活発な子です。小学生の頃、初対面の方にきちんと挨拶ができたので「えらいね」と褒めたことがあるのですが、「こんなことは当たり前のことだよ、お母さん」と言われ、驚いたことがあります。

 

━━ もともと、しっかりしたお子さんだったのでしょうか?

 

佐代美さん はい。小学校3年生の初対面の頃から、活発で素直でよい子でした。

 

孝昌さん 交流中は楽しかったですね。公園でサッカーをし、学校の運動会や地域のマラソン大会にも見に行ったりもしました。

 

佐代美さん 「僕を見て、見て!」というアピールがすごかった! キャッチボールをしたり、バッティングセンターに行ったりもしていたんじゃない?

 

孝昌さん いろんなところに遊びに行ったよね。近隣に登山に出かけたり、横浜・山下公園のナイトクルーズにも行ったり。夜景がきれいで、喜んでくれました。

 

━━ 児童養護施設は、夜にはなかなか外出できないので、嬉しかったでしょうね。

 

孝昌さん 夏だったので開放感があって、私も思い出に残っています。

 

 2

小学校時代には、親子でよくキャッチボールをしました。

 

 

「僕は、これまで我慢していたんだ!」


━━ ところで、養育家庭に登録されたきっかけをお聞きしても?

 

佐代美さん 私たちは子どもがいなかったのですが、やっぱり子どもを育ててみたいとなって、最初は養子縁組を考えました。でも児童相談所に相談に行ったら、施設には家庭で生活できない子どもたちがたくさんいるというので、夫婦で話し合って、養育家庭に登録することにしました。

 

━━ 登録からどのくらいで、A君のお話があったのでしょうか?

 

佐代美さん 2か月後ですね。児童福祉司さんからお電話があって、「ご希望よりも少し年齢が高いのですが、いかがでしょうか?」と聞かれました。書類上は7歳までの子どもを希望していましたが、嬉しくて「もちろんです!」と答えました。

 

━━ 交流が終わり、自宅に迎えてからは、いかがでしたか?

 

孝昌さん 交流中は手がかからない、いい子でしたが、徐々に自分が出始めました。わがままを言いたい放題、ゲームはやりたい放題、私たちの注意を聞かない状況となりました。毎日、闘いの連続で、注意したことは数え切れずで、覚えていません。

 

佐代美さん しばらくして、赤ちゃん返りがありました。ギャー、ギャーと泣き叫びながら、横に寝たり、ご飯を食べさせてもらうことを求めてきました。小さい子によくありますけれど、私がトイレに立つとついてきました。

 

私はそういう気持ちは出したほうがいいと思っていて、まだ小学5年生ならいいじゃないかと思って受け入れていました。

 

そうしたら、今度は宿題をしているときに、いきなり、ギャー、ギャーと泣き叫びながら「僕は、これまで我慢していたんだ!」という言葉を出すようになりました。

 

宿題など、あまり自分がしたくないことをするときに、今までのつらかったことも一緒にまとめて感情として吐き出されるようになってきたんしょうね。

 

━━ ちょっと切ないエピソードです。

 

佐代美さん はい。だから私も受け止めるようにしていました。私も昔は親に反抗していた時期があって、親も未完成なのが普通と思っていました。もちろん私も完全じゃないんだから、「そんなにいい子じゃなくてもいいよ」って言っていたんです。いい子だと逆に、感情をためこんでしまって、外でいろいろやっちゃう場合も多いので。

 

A君も私と同じで、「思うことがあったら言ってほしい」「無視されることのほうが僕は嫌だ」とはっきり言ってくるタイプでしたから、私も本音を言っていました。遠慮しない感じでしたよ、お互い。

 

━━ それは素敵ですね。

 

佐代美さん ありがとうございます。最初に会ったときから、A君から私たちとの関係を築いていこうとする強いエネルギーを感じていました。だから、「こっちも本気出すから、あなたも本気だしてね」という感じでやってきました。

 

でも、「世の中にはやっていいことと、いけないことがあって、自分が大変だからといって、世の中の人に八つ当たりしちゃだめだよ」とは伝えていました。

 

━━ そうやっているうちに、A君の赤ちゃん返りもおさまったのでしょうか?

 

佐代美さん はい。直接のきっかけは、夜中11時ぐらいの宝探しゲームでした。これから寝ようというときに、パチッと目を開いて、「お母さん、おもちゃの宝探し隠すから、お母さんも探して」と言い始めたんです。それで夜中に一緒に宝探しをやるのですが、最初はけっこう頻繁で、徐々に少なくなっていきましたが、1年くらい続きました。

 

━━ どうして宝探しを?

 

佐代美さん 私も分からないのですが、本人なりに、何か私とコミュニケーションをとれる環境を作りたかったのかもしれないです。宝探しは、もう交流のなくなった実親と一緒にやりたかったことなのかもしれない、とも思います。

 

 

3

A君が調べて書いた、カブトムシの観察日記です。

 

 

「彼は今、育ち直しをしているんです」


━━ 周囲の方たちからの理解はありましたか?

 

佐代美さん はい、すごく支えていただきました。学校のクラスのお母さんたちには最初に私がJ君の里親であることを伝えました。そうしたら皆さん、「言ってくれて良かった」と、温かく見守ってくれました。

 

思春期に入って反抗期みたいなところが出てきたときには、周囲のいろいろな方から助けていただきました。里親家庭に限らずどの家庭も悩みは同じかもしれませんが、あんなに明るく活発だったのに、いきなり変わってしまいました。

 

いつも何かに苦しんでいるように見えました。育ちへの葛藤がある反面、もっと幼いときから我が家に来たかった、という気持ちもあったみたいでした。自我と闘っていたのだと思います。中学校の3年間はそんな調子できつかったのですが、皆さんの支えがあって、乗り切れた感じですね。

 

孝昌さん 学校の先生、スクールカウンセラーさん、里親支援機関の皆さん、先輩里親さんなど、たくさんの皆さんに助けられ、ありがたかったです。

 

佐代美さん 学校行かない日もあったりしたのですが、先輩里親さんからは『学校行きなさいって言わない方がいいよ。子どもはそう言われると、逆に行かなくなっちゃうから』とアドバイスをいただきました。

 

━━ そう言ってくれると、ちょっとほっとしますよね。

 

佐代美さん 「本当にそうなのかなぁ?」と最初は思ったんですが、A君も無理に「学校に行きなさい」と言ってほしくないと思っていたようでした。だからあまりそういうことは言わずに、見守ることにしていました。

 

学校の先生に言われて一番印象に残ったのは、「今、A君は鈴木さんたち夫婦との親子関係を必死で作ろうとしているのだから、まずそこだけを考えてください」って言われたことでした。

 

保健の先生は、「彼は今、育ち直しをしているんです。心配かもしれませんけど、受け止めてあげるだけでいいです」と。

 

孝昌さん おかげさまで、今は無事に高校生になって、落ち着いています。親子げんかもしましたが、A君なりに苦しみを乗り越え、成長していることを理解できたことが、私の最大の喜びです。当時を支えていただいた皆さんに本当に感謝しています。

 

 

大人になるのは楽しいからね


━━ 将来、どのような大人になってほしいですか?

 

佐代美さん 先のことは全然まだ分からないですけど、周囲とうまくコミュニケーションをとりながら、お金を自分で稼いで、自活できるようになってほしいですね。

 

孝昌さん 私も同じ思いです。

 

佐代美さん 今の社会には、大人になれば楽しくないことが増えると思わせる風潮がありますよね。A君もそうですが、若い人たちは「働くと責任は出るし、パワハラもあるし…」とか言いますけれど、私は「いや違うよ、社会に出て、仕事ができて稼げるようになって、それによってまたいい人間関係もできるし、大人になるのは楽しいからね」って言っているんです。

 

A君には、何か人の役に立ちたいという気持ちがあるんですね。でも人の役に立つためには、まずは自分自身を助けなければいけない。少しずつでいいから、周囲を思いやりつつも自活できるよう頑張ってほしいなと思います。

 

孝昌さん 10年、20年後でもいいんですけど、生活基盤が出来上がって、遊びに来てくれると嬉しいです。

 

佐代美さん はい。それが、私たち夫婦の究極の夢ですね。

 

 

 

 

里親に関心がある・なりたい方へ 鈴木さんご夫妻からのメッセージ

~大変なこともあるけれど、里親の思いは、ちゃんと子どもに残る~

孝昌さん 里親になると、厳しいことがあります。でも、楽しいこともあります、たくさん。だからぜひ里親になって、何かがあったときは、先輩里親さんとか学校の先生、いろんな方々に相談し、楽しい生活を送ってください。よろしくお願いいたします。

 

佐代美さん 大変ですけど、一生けん命やったぶん、子どもは育つと思います。私の場合は、「駄目だと思っても、自分をどんどん変えていけばいいし、いつでも変わることができるんだから大丈夫だよ」と言い続け、A君は「お母さん、僕は自分自身を変えていこうと思っている」と、返してくれました。子育ての方法はその里親さん、また子どもの性格にもよると思いますが、里親の思いは、ちゃんと子どもに残ると思います。

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