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里親Story #05 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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里親Story

里親Story #05

若狭佐和子さん(49歳)

Sawako,Wakasa

「一緒のおかずを食べる日常で、家族はできていく」

若狭佐和子さんが「何か社会のお役に立つことをしたい」と考え、夫の一廣さん(55歳)と東京都の養育家庭(里親)に登録したのは27歳のことでした。それから22年。すっかりベテラン里母となった佐和子さんは今、複数の社会的養護が必要な子どもたちを自宅に預かり育てる「ファミリーホーム」(※)の“お母さん”として、多忙な日々を過ごします。佐和子さん、里母のやりがいについて教えてください!

(聞き手・文・写真=清水麻子)

 

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profile

若狭佐和子さん <1996年、東京都の養育家庭(里親)に登録>

わかさ・さわこ 東京都荒川区のファミリーホーム「陽気ぐらしの家わかさ」の“お母さん”。現在は4歳(幼稚園年中)から18歳(社会人)までの5人の里子を育てている。2人の実子(大学生と大学院生)、義母らをあわせて計12人の大家族。現在委託中の里子を含め、これまでに30人を育てた。趣味は手芸。

※ファミリーホーム:家庭の中で、社会的養護が必要な5~6人の子どもを預かり、子ども同士の相互の交流を活かしながら、基本的な生活習慣を確立する場所のこと。東京都では1985年から、全国的には2009年から制度化された仕組み。

※年齢は2018年9月現在

 

 

━━20代で里親になられたのですか?

 

佐和子さん はい。私は24歳で結婚したのですが、当時から、ときどき夫婦で「何か社会のお役にたてることをしたいね」と話し合っていました。そんな中で貧困や虐待などの事情で親と暮らせない子どもがいることを知り、27歳の時に東京都の養育家庭(里親)に登録することにしました。まだ次女がおなかの中にいる頃だったのですが、出産後しばらくして児童相談所から「親が育てられない3人兄妹たちを、ちょっとだけ預かってもらえませんか?」とお電話があり、1か月間だけ育てました。


━━出産直後にですか!? 短期間だったからできたのでしょうか?

 

佐和子さん はい、そう思います。兄妹たちが、うちに来て過ごすうちに表情が明るく変化して、本当に嬉しかったことを今も昨日の出来事のように覚えています。一時保護委託は、実親さんが病気などで短期間、子育てができないときに自宅でお預かりする仕組みですが、はじめて里親になる方のスタートとしてはとても入りやすく、おすすめです。

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━━これまで、何人の里子を受け入れてきたのでしょうか?

 

佐和子さん 一時保護委託を含めて、30人くらいです。
一番大きい子はもう30代半ばになっています。結婚して、もう1歳の子がいる里子もいます。
「ここが実家なんだから、いつでも帰ってきていいんだよ」と言っているので、ときどき、近況を知らせに遊びに来てくれます。
「この洋服、誰か着てくれない?」などと言って、“弟”や“妹”の洋服を持ってきてくれたり、「今日はグチだけ言いに来た!」と言って会社帰りに寄ってくれる子もいます。毎日いろいろあるようですが、みんな自立した大人に成長してくれて、頼もしい限りです。

朝6時に里子のお弁当を作っていて思うこと

━━今は5人の里子さんを育てていらっしゃるのですね。

 

佐和子さん はい。幼稚園年中のJ君(4歳)、小学生のA子ちゃん(10歳)、中学生のS君(12歳)、同じく中学生のK君(14歳)、今年高校を卒業して社会人になったばかりのD君(18歳)まで、毎日本当ににぎやかです。とにかく家事や学校関係でやることが多いのですが、充実しています。朝6時に2人の里子のお弁当を作っています。一番下の幼稚園生のJ君は小食で、野菜嫌いなのですが、キャンディー風のチーズを入れたり、かつやブロッコリーなどは一口サイズに小さくカットするように工夫したら、どんどん食べてくれるようになっていくんですよ!カレーにご飯をかけ(普通のカレーと逆)、ごはんの上に、海苔でかわいく名前やキャラクターを飾った「カレーキャラ弁」は嬉しいようで、完食してくれます。

 

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ある日のJ君のお弁当(左)、D君のお弁当(右2つ)=佐和子さん提供

 

一番上のD君(18歳)のお弁当は、若い男子なので、からあげ、シュウマイなどのガッツリ系です。ご飯もお弁当の蓋ぎりぎりまで、“ツメツメ”の状態で持たせています(笑)。土日には、中学生のS君とK君のお弁当を作ります。2人ともバレーボール部なのですが、部活にお弁当を持っていくんです。今は少ないほうです。高校生を多く預かっていたときは、やっぱり朝早く起きて1日4個のお弁当を作っていました。冷凍食品も活躍しましたし、晩ごはんをとっておいてアレンジしながらなんとかやっていました。


━━すごく忙しそうです。

 

佐和子さん はい、でも「こうやったら食べてくれるかな」と思って作っていると楽しくて、多くの方が思うほど手間じゃないんです。1人分のお弁当を作るのも、4人のお弁当を作るのも、詰める時間くらいしか変わらないわけですから。お弁当のことって、けっこう大きくなっても思い出に残っているものじゃないですか。子どもたちが大きくなったとき、お弁当の味を覚えていてくれると嬉しいですね。


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「今日のお弁当、おいしかった?」。子どもたちと過ごすひととき。

 

ほかにも、子どもたちの毎日の出来事を聞いたり、一緒に買い物をしたり、宿題をみたり、掃除をしたりもしますので、子育てと家事で1日が終わります。夜は疲れて子どもと一緒に早く寝ちゃいます。その代わりに早朝に自分の趣味の手芸の時間を作るようにしているんです。唯一の息抜きの時間です。朝4時に手芸をしているって、不思議ですか?(笑) もともと手芸が好きで、かぎ針編みなどをよくやっていました。作品が出来上がるときれいだし、かわいくて、つい時間が経つのを忘れてしまいます。好きなことをやっているからか体の調子も良くって、朝の手芸を続けていると肩こりもおさまるので不思議です。

 

若狭佐和子さんのある日のスケジュール
4時

起床 趣味の時間(ハワイのレイなど手芸)、書類書き等

6時 朝食作りのほか、J君・D君のお弁当を作る
6時半 掃除  D君、朝食の後、出勤
7時20分 朝食
8時過ぎ A子ちゃん、S君、K君が順次登校
9時

J君を幼稚園に送る

片付け、掃除、洗濯など

14時 J君を幼稚園にお迎え
16時

子どもたちの病院に付き添ったり、買い物をしたり

家事、掃除などの家事、雑事

19時 家族みんなで夕食
21時 就寝

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佐和子さんが趣味で作ったハワイのレイ(首飾り)

最初は「ちゃんとしつけなければ」と思っていた

━━里親になった当初と、里親歴22年の今とでは、子育て観に違いはありますか?

 

佐和子さん 社会的養護のもとにいる子どもたちは、さまざまな事情を抱えています。大人が信用できず、ここに来てから一言もしゃべらない子もいましたし、掃除や片付けをしなかったり、勉強も苦手という子もいました。当初は、そういう子どもたちの行動を「ちゃんとしつけなければいけない」と思って、口うるさく言っていたと思います。周囲の方へのご挨拶も、今振り返ると口うるさかったと思います。昔、うちで過ごした里子たちに聞くと、「あの頃のお父さん、お母さんは厳しかった」なんて言われたりします(笑)。でも長い経験のなかで、しつけよりは子どもの良いところは伸ばして、悪いところは課題ととらえて修正していくことが大切だということを理解するようになりました。部屋の掃除をしないとか、勉強をしないとか、反抗的なことを言ってくるとかしても、「今、うちにいる間に、気持ちを全部出していくほうがいい」と思って、できるだけ頭ごなしに叱らないようにしています。

 

━━ずっと部屋の掃除や勉強をしなかったら、どうするんでしょう?

 

佐和子さん 1度目、2度目までなら叱りません。3回目でカミナリが落ちることが多いかな(笑)。「仏の顔も3度まで」といいますが。子どもたちも「お母さんはここまでなら大丈夫」「ここからは叱られる」というラインを良く知っているんですね。ふだんは勉強のことにうるさくなくても「今はテスト前ならしないと叱られるはず」などのパターンが子どもたちの中に埋め込まれているんじゃないでしょうか(笑)。私に叱られる前に自分を律しているという感じです。

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━━実子を育てる場合と、そう変わらないのでしょうか?

 

佐和子さん そう変わらないんですが、少し違いがあります。実子を育てていると親のエゴで「この子のために、これをやってあげたい、させてあげたい」と思うことがあると思います。でも里子の場合は、里親の思いをそのまま里子にしてあげるというふうには事が運ばないことがあります。その子の背景や、実親の気持ち、児童相談所の客観的な意見も踏まえたうえで、総合的に子育てを進めていくことが求められます。実親の思いや児童相談所の意見を踏まえると、里親の思い通りにならない歯がゆさはありますが、一方でそれは、子どもの健全な巣立ちのために必要なことでもあります。かといって、里子育てがすごく難しいわけではなく、むしろ周囲からのサポートがたくさんあるから、心強い部分もあります。自然体で子どもを育てていれば大丈夫です。


━━里子が5~6人で暮らすファミリーホームの良さはありますか?

 

佐和子さん 子ども同士が、交流しながら暮らせるところですね。今、うちで暮らしている男子たちは、ときどきスポーツのように料理をして楽しんでいます。この前は、「肉派」「魚派」に分かれて、味付けを競い合っていました。「漁師風の味付けだからこっちのほうがおいしいだろう」とか言いながら(笑)。そうやって日常を切磋琢磨しながら、繋がりを持てているのが楽しいようすね。すでに自立した里子の中にもグループができていて「実家飲み会」と称して、お惣菜を持ち寄ってきたりすることもあります。若狭家で一時期を過ごした兄弟姉妹のような繋がりは、一生続いていく宝物なんじゃないかなと思います。

 

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~若狭佐和子さんからのメッセージ~

血が繋がっていない子を育てるのは大変だと思われるかもしれませんが、一緒に時間を過ごしていれば、一緒にいるのが当たり前の大切な存在になっていきます。家族は一緒にいる時間が作っていくものだと思います。多くの方に、里子育てのやりがいを感じてほしいと思います。

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