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里親Story #01 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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里親Story

里親Story #01

篠幸子さん(49歳)

Sachiko,Shino

「主人を説得して、里親に。人生の深みを感じています」

緑に囲まれた一軒家で、実子を含めて5人の子どもたちを育てている篠幸子さん。2歳半で家庭に迎えた里子のT君は、いま5歳半になりました。3度のご飯作りに加えて、洗濯、掃除、子どもたちとのおしゃべりの時間……。5人の子育ては、めまぐるしいほどの忙しさですが、「里親になって、人生の深みに気が付きました。毎日が充実しています」と、幸子さんは話します。

(聞き手・文・写真=清水麻子)

 

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profile

しの・さちこ < 2013年、夫の雄一さん(53歳)と東京都の養育家庭(里親)に登録>

専業主婦。知人が里親をやっていたことから、社会的養護に興味を持つ。20歳(専門学生)、14歳(中2)、11歳(小6)、8歳(小3)の実子、5歳の里子(保育園児)の子育てに奮闘中。「自然の中で、子どもたちは元気に育つ」がモットー。

※年齢は2018年7月現在

きっかけは、2人目不妊から

━━どうして養育家庭(里親)になろうと思ったのでしょう?

 

幸子さん 私は田舎町の大家族で育ったので、何人か子どもがほしかったんですね。東京に来て結婚し、1人目の子を授かりましたが、2人目が、ぜんぜん授からなくって。もしかしたら、もうできないかもしれない……と悩んでいました。そんなとき「そういえば里親は?」という思いが、ふつふつと。

 

━━ふつふつと(笑)。養育家庭(里親)を知っていたのですか?

 

幸子さん はい。実は、知人に養育家庭(里親)をやっている方がいらしたんですね。その影響もあって「やってみたい」と、何となく思いはじめて。主人に相談したんですけど、「里親なんて、あなたにできるの?」というような反応でした。だから里親への思いは、ずっと自分の心の中に抑えていました。

結局、1人目の出産から5年が過ぎた頃に、2人目を授かりました。そして続けて3人目、4人目と順調に授かっていったんです。でも「里親になってみたい」という気持ちが心から離れず、子育てが少し落ち着いたとき、また主人に相談してみたんです。その時も「実子たちが、かわいそう」という理由で、すぐには返事もらえなかったんですけど。

 

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━━そんなに里親さんを、やってみたかったのは、どうしてですか?

 

幸子さん 元気に動ける人生が80歳くらいまでだとして、生きているうちに、自分にできることは限られていると思ったんです。あまりすごいことはできないけれど、子育て経験だけはあるので、子どもたちと一緒に生活するということはできるんじゃないかと。

 

━━生きているうちにできることをというのは、深いですね。

 

幸子さん キャリアウーマンの方もいらっしゃるでしょうけど、私にはそんな才能があるわけではないですし。だから主人には「私の人生を応援してほしい」と訴えたんです。1年くらいかけて、時間をかけて、少し間をあけながら「やっぱり、里親をやりたいんですけど……いいでしょうか?」みたいな(笑)。最終的に主人は同意してくれて、同居の義母も「小さい子がいると、家の中が明るくなるしいいね」と言ってくれました。

大家族の中で育った私だから、できること

幸子さん 虐待事件が起きると、テレビや新聞でよく話題になります。でも、孤立する家族に、ちょっとそこにかかわってあげることで、そういうことは起きないとよく言われますよね。うちは裕福ではないですけど、昔からある古い家に住んでいるので、地域のつながりも深いんです。町会とかもしっかりしているし、お裾分け文化も残っているんですね。都会では珍しいかもしれません。

 

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篠さん宅の庭の、あんず。ジャムにしてご近所に配っています。

 

私が子どものころも、ご近隣さんとの付き合いが、たくさんあって、楽しかった記憶があります。大家族がワイワイしているところへ、ご近所さんも加わり夕食を食べるわけですから、おかず1つをめぐっても争奪戦で「あんた何個食べた?」と、常に飢えた状態でしたけれど(笑)。でもいいところも、たくさんあったんですね。兄弟や近所の友達で連なって、自然の中を走りまわったり。大家族なら里子が1人くらい来ても問題ないし、逆にノビノビできるんじゃないかなとも思いました。

 

東京都は毎年、里親や里子の体験を集めた「養育家庭体験発表集」という冊子を発行するのですが、ある高校生の里子さんの文章で「里母さんたちは、是非、趣味を持ってください」と書いてあるのを読んだことがあるんです。「僕たちのところに目が向きすぎると、重い。だから里母も是非、趣味を持って、過ごしてほしい」というメッセージだと理解しました。手が回らないくらいで、ちょうどいいのではと思ったんです。

 

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T君にも、基本的に食べて、寝て、着るものを提供している感じですが、あとは自分でいろいろ考えて、吸収していっているようです。人数が多いところでいつも過ごしていると、子どもも支え合いの心が育つように思います。「僕、テーブルふいてあげるね」とか、何か手伝おうとやってくれるんですね。「お母さんのために役に立ちたい」と思ってくれているのがすごく嬉しくて。いろんな心が育っていくんだなあと。そのぶん我慢をさせていることはあると思うんですけど。

 

━━T君、優しいんですね。

 

幸子さん ほんとうに。それと、ひょうきんものです。お笑いが大好きで、いつも笑っています。恥ずかしがりやなところもあって、発表会とか、みんなに注目されることが苦手ですね。でもポジティブで、すごく前向きですよ。

 

━━お忙しいなかで、1対1の関わりも、心がけているのでしょうか?

 

幸子さん 大家族だからT君のことを完全に放っておいていいというわけではないので、基本的に毎日、朝夜にごはんを一緒に食べて、その日あったことのお話を聞いていています。あと、一緒にお風呂も入ります。1日のいろんな話をしています。数が数えられるようになってきているので、「じゃあ何か数えようか」とか、周りのものをいろいろ数えています。寝るのは8畳の部屋に布団を敷き詰めて、5人の子どもと私が一緒に寝ています。私が子どものころと、変わらない光景です。

 

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初夏のあたたかな日差し。一緒にシャボン玉で遊ぶひととき。

 

━━逆に、難しいことはありませんでしたか?

 

幸子さん 食事ですね。乳児院では、嫌いなものは食べなくてよかったので、レタスやホウレンソウ、きのこ、たまねぎも食べません。嫌だから食べないというのではなく、嫌いでも、体のために食べなければならないものはあるんだよという話をしています。

それと乳児院での生活は規則正しいので、歯磨きなどは正しくと習慣づいていたんですが、例えば「今日は日曜日だからのんびりしている」とかは家庭で普通にありますけれど、T君はいつもどこかに行きたがります。そういう、家庭ならではの不規則なスケジュールに、まだなじめていないところはあります。

 

━━実子さんとの関係は、どんな感じでしょうか? 

 

幸子さん 実子たちはT君の面倒を見てくれたりしますし、協力的です。でも時々、「T君だけのお母さんじゃないんだから」とかの意地悪も言ったりすることもあります。そんなこともあって、また機会があれば、里子を迎えようと思っています。T君も、「里子が自分だけじゃない」と思えば、気もラクになると思いますし。

 

━━そうなると、またやりがいも増えますね。

 

幸子さん はい。実は一時保護といって、実親さんが病気の間だけお預かりする活動もしていまして、ここ何年かで。赤ちゃんから高校生まで、8人の子をお預かりしました。

 

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実親さんの入院など、短い間だけ一時的に子どもを預かる一時保護という制度もあります。
※写真はイメージです。(写真=鈴木愛子)

 

2か月弱、いろいろあって育児困難に陥ったお母さんの赤ちゃんをお預かりしたことがあるんです。お母さんは数か月休んでまた元気になったので、赤ちゃんとまた暮らし始めた。後になってそのお母さんが、「篠さんに、感謝の言葉を言っていたよ」と、児童相談所の方から聞いたとき、里親をやっていて、本当に良かったと思いました。

里親は子どもだけでなく、実親さんも一緒に幸せになってくれることを目指すものです。ぜひ多くの方に興味をもってもらいたいと思いますね。

 

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与えてるだけでなく、
子どもたちから学ばせてもらうのも里親です。

 

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