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里親Story #01 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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里親Story

里親Story #01

菊地伸幸さん(51歳)、節子さん(51歳)ご夫妻 

Nobuyuki,Kikuchi & Setsuko,Kikuchi

「実の親が育てられない子どもたちに、何かしてあげたい」

小学5年生のS子ちゃん、3歳のK美ちゃんの2人の里子を育てている菊地さんご夫妻。
養育家庭(里親)登録のきっかけは、かつて見た社会的養護が必要な子どもを育てる里親の姿を描いたテレビ番組だったといいます。
菊地さんご夫妻が、実際に里親になって8年。映像と、実際の里親の世界とは、どのように違っていたのでしょうか。

(聞き手・文・写真=清水麻子)

 

菊地さんご夫妻

 

profile

菊地さんご夫妻 <2009年、東京都の養育家庭(里親)に登録>

きくち・せつこ 看護師。長く病院に勤務してきたが、里親になったことをきっかけに退職。現在は専業主婦として2人の里子育てに奮闘する。

きくち・のぶゆき 元エンジニア。里子を育てる暮らしを続けるうち社会的養護への関心が増す。養育家庭に関する仕事を志すため今春、33年務めた会社を退社し、第2の人生をスタート。

※年齢は2018年7月現在

きっかけは、テレビ番組と不妊治療

━━どうして里親になろうと思ったのでしょう? きっかけから教えてください。

 

節子さん ずいぶん昔の話なのですが、結婚当初、たまたま見たテレビで里親子の話をやっていたんです。映像のインパクトは大きくて、実親が育てられない事情を抱えたお子さんがいることを初めて詳細に知りました。将来、自分の子どもができたとしても「困っている子どもたちに、私も何かしてあげられたらいいな」と、里親に興味を持つようになりました。そして日常に追われながら、ちょっとずつ情報を収集していきました。

 

実子をもちたいとも思っていましたが、できませんでした。10年近く断続的に不妊治療をし、でもぜんぜん授かる気配はなかったので、自分の子どもは諦めたほうがいいかなと思うようになりました。そして40歳を過ぎて「里親になりたいと思うんだけど、どう?」と、主人に相談してみたんです。

 

伸幸さん 僕の中での一番のきっかけは、カミサンが不妊治療をしている姿を見るのがつらかったことかなぁ。排卵誘発剤の注射が痛そうでしたし、お金もずいぶん使ってしまいました。じゃあ一度、児童相談所に一緒に行ってみようと。

 

━━不妊治療を経験された方は、特別養子縁組を選ぶ方が多いですが、どうして養育家庭(里親)だったのですか?

 

節子さん 最初は特別養子縁組をインターネットで探し、民間あっせん機関を調べました。今は違うかもしれませんが、当時は40歳を過ぎた夫婦への養子縁組の情報は見当たらず、難しいことなんだと理解しました。そんなとき、長年、里親さんとして事情を抱えた子どもを育てられたテレビを見て、感銘を受けました。戸籍に入れずに子どもを育てる養育家庭(里親)のことも調べるようになっていきました。

親子イラスト

乳児院での交流を経て、うちの子になった

━━最初の乳児院での交流(※)について教えてください。

 

節子さん 東京都の養育家庭(里親)に登録をすると、しばらくして児童相談所からお知らせが来ました。そしてS子ちゃんに会いに乳児院に通うことになったのですが、S子ちゃんは3か月経ってもそっけない態度で。乳児院の職員の方に相談したんです。「一度、家に連れていってみたらいかがですか?」とアドバイスをいただき、日帰りで家に遊びにきてもらったんです。そこからです。よりぐっと距離が近くなったのは。手をつないで、ごはん食べて、ちょっと家で遊んで帰る、という楽しい交流を続けました。週末のたびに乳児院に行くと、「待ってたよー」と、手を挙げて喜んでくれたときには、「ああ、これでやっていける」と思いましたね。相談員の方は、私たちの関係を専門的な目線でよく見てくださっていたのですね。ありがたかったです。

 

(※)委託候補児童の候補家庭として選ばれてから、数か月程度、定期的に乳児院を訪ねて交流をすること。

 

━━そして2人目のK美ちゃんも迎えたのですね。

 

節子さん 昨秋から、3歳の子を別の乳児院から迎え、育てています。交流期間は上の子のときよりも短くて、3か月程度でした。甘えん坊で、いつも抱っこを求めてきます。

 

━━S子ちゃんは、突然できた妹さん(K美ちゃん)に、どんな思いを?

 

節子さん 実は姉妹、仲がいいんですよ。うちには子どもたちのほかに、猫5匹も一緒に暮らしているんですが、猫のほうが、よっぽど突然現れた3歳児(K美ちゃん)に嫉妬してきます(笑)。

 

動物園が大好
休みの日には家族で遠出をすることも。2人は動物園が大好きです。
※写真はイメージです。(写真=鈴木愛子)

誕生日にもらった手紙を、財布に入れて

━━ご主人は2人の里子育て、いかがですか?

 

伸幸さん 僕は、里親になって、本当に良かったと思っているんです。毎日子どもの成長を感じますし、50歳を過ぎたと人生の折り返し地点で「社会で子どもを育てる」ことの実践に、深い意義を感じます。

実は今春、33年務めた会社を辞めたんです。上の子を8年育てた経験から、実親が育てられない子どもという問題について深く考えるようになったので、一大決心をして福祉職に転じようと思いました。エンジニアと全然違うんですが、里親委託率を75%(未就学児の目標)(※)にあげるには、1人でも多くの人間が、何ができるか考えたほうがいいと思ったからです。具体的に何ができるかは、これからですが。

 

(※)「なぜ里親が必要?」を参照

 

上の子は、僕の誕生日のたびに、手紙を書いてくれるんです。僕、それらを折りたたんで財布に入れて持ち歩いているんです。仕事で頑張らなきゃって思うときなどに、それを見返しています。小さいころ、一緒に行った映画のチケットとかも財布に入れたままなんです。

 

手紙の数々
伸幸さんが、S子ちゃんからもらった手紙の数々です。(写真=鈴木愛子)

 

節子さん 子どもたちと毎日一緒にいる私は、奮闘の日々です(笑)。上の子は今、反抗期に入ったので、口ごたえもしてきますし、テレビばっかりみて、宿題をしない時もあるから、喧嘩もします。ご飯のおかずをめぐっても、「今日はエビドリアって言ったのに」などと子どもなりの要求がありますから。子育ては24時間365日が、何年も続くわけです。でもこれは里親子に限らず、一般家庭も同じでしょう。

もちろん大変なことばっかりではないですよ。時々、「ママ大好き」と言ってくれたり、「かわいいね」なんて言われたりもします。私のようなオバサンに「かわいい」も何もないとは思うんですが……(笑)。でも、なにせ子どもたちからは、いろいろなことを与えられます。だから私たちも頑張らせてもらっていると思っています。

子育てをしていて驚くのは、子どもの個性です。上の子は字を書くことが好きなんですね。書道をさせてみたら、すごくいい文字を書くので、驚いたんですね。いいところを伸ばし、自信に繋がるものを身につけていってくれたら、と思っています。

 

ミックな文字を描くS子ちゃん

ダイナミックな文字を描くS子ちゃん。将来が楽しみです。(写真=鈴木愛子)

 

━━真実告知は、どうされましたか?

 

節子さん 上の子は、小学校に入る前の年にしました。うちに来てから、何かを確かめるように「お母さんから産まれてきたんだよね」と、聞いてくることが何度かあったんです。私も、嘘はつきたくないので、いつもはぐらかしてきたんですね。だから真実告知のときには、最初に謝ったんです。そして、こう伝えました。

「S子ちゃんからずっと『お母さんから生まれてきたんだよね』って声をかけられていたんだけど、今日お話ししたいことは、S子ちゃんには生んでくれた親がいて、私たちは育てている親なのよ」

「真実告知をする際におすすめよ」と、里親の先輩から教えてもらった本を読み聞かせながらでした。S子ちゃんは、いつも元気いっぱいなので、「真実を知ったらどうなるかしら?」と思ってたんですけど、実際は表情ひとつ変えず、「そうなの」と。そして、すぐ遊びに取りかかってしまったんですね。親が気負うほど、子どもは真実告知を、そんなに大事(おおごと)に捉えていなかったのかもしれません。

 

「たからものはなあに?」の絵本
あいだひさ作 たかばやしまり絵「たからものはなあに?」の絵本より(写真=鈴木愛子)

「産んでくれたお母さんに感謝だよね」

普段は、血のつながった親子と変わらない暮らしなので、私もつい忘れがちなんですけど。

下の子(K美ちゃん)もまだ3歳で、分からないかもしれないけれど「産んでくれたお母さんに感謝だよね」と、声をかけるようにしています。突然、真実を伝えられるよりも衝撃は少ないですし、子どもが自身の生い立ちを少しずつ整理していくにはいい方法だと思っています。

2人が育った乳児院(S子ちゃん、K美ちゃんは、それぞれ別々の乳児院で育っています)にも、ときどき連れて行っています。乳児院には、2人を知っている人がいっぱいいて、大きくなったねと迎えてくれます。気恥ずかしい面もあるけれども、こんなに多くの人たちの愛情で育てていただいたことは事実です。いつか少女になり、大人になっていく過程で、何か腑に落ちない出来事に出会うこともあると思います。そういうとき、乳児院でいただいた多くの愛情は、彼女たちの見えない心の支えになるんじゃないかと思うんです。

 

菊地さんご夫妻

「子どもたちには、たくさんの愛情をもらって育ってきたということを知ってもらいたい」と、菊地さんご夫妻は話します。

 

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